最後の1秒まで諦めない!~サーフィンで世界へ羽ばたく~

学生の活動
リベラルアーツ学群4年 田岡なつみさん(プロサーファー)

※学年は本誌発行時点のもの

わずか16歳で日本プロサーフィン連盟のテストに合格し、プロサーファーとして国内外の試合に出場しながら、大学へ通い続けた田岡なつみさん。中国での「ワールド・ロングボード・チャンピオンシップ」から帰国したばかりの田岡さんに、学業とサーフィンのことや将来の夢を語ってもらった。

アジアカップ初出場での優勝おめでとうございます。世界最高峰のワールド・ロングボード・チャンピオンシップ(以下WLT)にも初出場されましたが、今のお気持ちはいかがですか。

日本代表の出場枠は一人だけなので、なかなか出ることができなかったのですが、今回ようやく夢の舞台に立てました。結果は9位でしたが、世界一を競う場で、海外の選手のライディングに刺激されて、あまり練習していなかったハングテン※1をやらなければという気持ちになり、トライしたんです。初めてハングテンを長く決めることができ、高得点を獲得することができました。

※1:徐々にボードの前の方へ歩いていき、ボードの先端に両足の指を掛けるショートにはない技。ロングでは最もレベルの高い技とされ、片足のみのハングファイブができてもハングテンはできないサーファーも多い。

ロングボードを始めたきっかけを教えてください。

もともと両親がサーフィンをやっていて、物心がつく前から毎週日曜日は家族で海へ行き、父と一緒にタンデム(二人乗り)をしていました。本格的にロングボードを始めたのは、10歳くらいからです。

ショートボードはジャンプする技やスピード感があって、どちらかというと男性的に感じますが、ロングボードは板の上を歩き、先端でダンスをしているように見えるので、女性が乗るとスタイリッシュできれいなイメージがあります。私はロングボードの優雅さが好きで、そういうところを目指しています。

ただ、ロングボードは波が大きいと折れてしまうこともあるので、ショートボードを練習したこともありました。オリンピックの正式種目にショートボードが採用されたのを機に、一昨年くらいから本格的に練習しはじめ、昨年の大会に初めて出場したんです。

「2016年度秋季全日本学生サーフィン選手権大会」女子のショートボード部門、ロングボード部門でダブル優勝したときのトロフィーを手に。

全日本学生サーフィン選手権大会の女子ショートボード部門でも初出場で優勝されましたね。ところで、ロングボードが折れることはよくあるのですか。

波が大きいとよくあります。WLTのために新しい板を作ったのですが、その前の台湾オープンとアジアカップで板の調子がすごく良かったので攻めすぎてしまい、大きい波に乗ろうとしたら板が波に巻かれて折れてしまいました。まだ4回くらいしか使っていなかったのですが…。

アクシデントが起きたときは、どのように対処していますか。

やはり慌ててしまうのですが、アクシデントの後は波が来たらすぐ乗るのではなく、1回深呼吸して気持ちを落ち着かせてから波を追うようにしています。実はメンタルが結構弱くて緊張しやすいので、いつも試合を楽しむように心掛けています。最初のころは試合中に緊張でガチガチになり、足も体も動かないような状態だったのですが、最近は試合が楽しくて仕方なくなってきました。

試合に対する気持ちが変わったきっかけは何ですか。

3年前、ALL JAPAN 新島というJPSAジャパンプロサーフィンツアーで最も歴史のある試合に出場し、ラスト10秒で勝負が決まるという場面の残り3秒くらいでテイクオフ ※2ができ、その1本で逆転優勝したことがあるんです。それまでは準決勝やもっと下の順位で負けていたのですが、そのころから表彰台に立てるようになってきて、最後の1秒まで諦めないことの大切さを知りました。

また、負けたときも「次はこういうことをしよう」と、そこからいろいろ学べるようになりました。精神的に少し強くなれたのかもしれません。

※2:ボードの上に腹ばいになって手で水をかき、波に乗ってボードに立つこと

大学へは千葉から2時間半掛けて通っているそうですね。ご自宅から遠い本学を選んだのはなぜですか。

GOプログラム(留学プログラム)に引かれました。他大学の留学制度は、テストで選ばれた人が対象だったり、留学期間が1、2カ月だったりするのですが、桜美林は誰もが4カ月間留学でき、単位になるのが魅力でした。一人でいろいろな国へ行って外国の選手とコミュニケーションを取りたいと思っていたんです。2年生のときにオーストラリアへ行き、ほぼ毎日サーフィンをしながら、英語を学びました。留学をして英語力は確実に向上しました。

留学先のウーロンゴンは、シドニーから車で1時間半ほどの小さな田舎町ですが、有名なサーファーの出身地でもあるので、そこで出会った人とはつながりを感じるんです。毎年ゴールドコーストで試合があるのですが、そのときにはお世話になったホストファミリーに必ず会いに行っています。

サーフィンと学業の両立は大変だったと思います。4年間を振り返って、苦労したことや良かったことを教えてください。

毎年プロの試合が4月にあるため、年度初めの授業は丸々1週間出席できません。桜美林には公欠制度がないので、1週間分の穴を埋めるのが大変でした。隣に座っている子に声を掛けて友だちになり、いろいろ教えてもらったんです。進級すると時間割が変わってしまうので、毎年一から始める感じでした。学業は本当に努力しました。授業以外はずっと学内のセルフアクセスセンター(PCを自由に使える教室)で勉強していました。

良かったのは、一緒にサーフィンをする仲間ができたことです。サーフィンサークルに入り、仲間と一緒に練習したり、海外へ行ったり。昨秋の全日本学生サーフィン選手権大会の大学団体戦では、あと一歩のところで優勝を逃しましたが、2位という今までで一番良い成績を残すことができて、うれしかったです。

2016年秋季全日本学生サーフィン選手権大会(静岡県下田市)

今後、チャレンジしたいことや、目標について教えてください。

今はサーフィンが一番ですが、旅行もしてみたいですね。サーフィンで海外へ行くときは、ボードが2、3枚あって荷物が多く、海の近くにしか行けないんです。観光に出かけたりして、その国についてもっと知りたいと思います。
今年はJPSA※3でグランドチャンピオンになるのが一番の目標です。そして、今年もWLTに出場できることになったので、小さいころからの夢である世界一を目指して頑張りたいと思います。
 

やっとオリンピックの正式種目に決まりましたが、サーフィンはまだまだスポーツというより遊びと捉えられているので、将来的にはサーフィンがスポーツであることを知ってもらい、サーフィン人口が増えるようなきっかけをつくれたらと思っています。

※3:日本プロサーフィン連盟。2016年度は年間ランキング2位。

ありがとうございました。世界でのさらなるご活躍を期待しています。