ワークスタイル改革

職員が生き生きと働き、新しい学びと成長のための環境整備

桜美林学園では、生産性の向上等の課題を解決するだけでなく、教職員がより働きやすく、学生がより快適にキャンパスで学習できる環境を提供するため、働き方の見直しを行っています。キャンパスの拠点化に伴い、町田キャンパスを中心に情報ネットワークを整備し、新しいワークスタイルの構築を目指しています。

背景

東京ひなたやまキャンパス

2020 年4月に開学した東京ひなたやまキャンパス

この10年、大学では学群制を導入し、学群(カレッジ)ごとに特色ある教育や研究を行う体制を構築してきました。2019年4月に新宿キャンパスが開校し、ビジネスマネジメント学群が移転。2020年4月には本町田に芸術文化学群の新しい拠点となる東京ひなたやまキャンパスが完成したことで、キャンパスの拠点化が本格的に始動。教職員の職場が物理的に離れることから、効率的な働き方が一層求められることになります。また、職員数に比べて事務セクション数が多く、自部署の仕事はしっかりと業務を行うものの、共同で作業する等の協力姿勢が希薄なセクショナリズム化が進む状況がありました。また、多くの留学生が集まり、多国籍の教職員が教育を提供して、国際キャンパス化構想を推進していくためには、様々な価値観を持った多様性を大事にして、働く環境についても多様性を重視することが必要です。「長時間労働の削減」「労働時間管理」といった取り組みを進め、業務効率化によって生み出される時間で、一層の学生サービスの充実や余暇の充実を図るワークライフバランスの推進が必要不可欠となっています。

全体像

本学園では、2017年度よりワークスタイル改革を開始。改革を2年ごと、3つのステージに分けて、目標を掲げ取り組みを進めています。

ワークスタイル改革1.0(2017〜2018年度)

これまでの仕事のやり方を見直し、業務の効率化を図るために、学園全体でペーパーレス化に着手。コミュニケーション基盤を見直し、電子申請・決裁システムやTV会議システムなど、ICTを活用した業務環境整備を行うことで意志決定を迅速化し、個人の生産性を向上させる。

ワークスタイル改革2.0(2019〜2020年度)

業務プロセス自体を見直すため、業務内容や時間量の実態を調査することで無駄な事務の削減、共通化・自動化などによる生産性の向上を目指す。学生の入学前から卒業後までのデータを一元化し情報を共有、活用することで業務の無駄をなくし、チームワークを高めて風通しの良い組織を作り、学生対応の品質、学園全体の生産性を向上する。

ワークスタイル改革3.0(2021〜2022年度)

各組織の業務や事務量を把握、組織機能の棚卸を実行し、不要な業務を削減し、適切な人員配置を行い組織を改革する。学園事務に必要な人財のスキルを定義して、教育、採用、配属を戦略的に行い、骨太の経営体質へ。

ワークスタイル改革1.0(2017~2018年度)

2017年秋から、企画、情報、総務部門スタッフで構成するプロジェクトチーム「ワークスタイル改革事務局」を立ち上げ、各部門の担当者がそれぞれの課題や問題点を話し合うプロジェクト会議を定期的に開催。学園内の有志やワーキンググループによって、ワークスタイル改革を先駆的に進めている企業・大学を訪問して事例を研究、参考にすることで、本学園としての改革を検討してきました。

業務の効率化をはかり、生産性を向上させるために、業務と人事の側面から現状を検討した結果、紙ベースの業務フローや、膨大な紙のストック・スペース占有、固定化した職場スペースによる業務の縦割りといった課題が浮き彫りになりました。このような課題解決のため、2018年度にICTの活用を前提としたワークスタイル改革に着手。学園全体で、「ペーパーレス推進プロジェクト」と「事務系基幹システム見直しプロジェクト」が始まりました。

ペーパーレス推進プロジェクト~既存文書の削減量52.6%を達成

ペーパレスPT文書削減量グラフ

FM(File Meter:形状・サイズに関わらず文書を積み重ねた高さを表す単位。1FMは高さ1m、書類約10,000枚に相当します) 

不要な紙文書を無くすペーパーレス、ペーパーストックレスオフィスの構築を目指すために、専門コンサルティングの指導のもと、2018年度から取り組みを開始。文書管理の見直しを行うため、電子化も含めて新たな「文書管理規程」を制定。あわせて26項目に細分化した「文書別管理基準」を定めました。文書の電子化についても、ファイル名の付け方やフォルダ体系などを定めたガイドラインを策定。各部門ごとに責任者をおき、既存文書の保存期間の見直しや、保存形態の選定など仕分け作業を組織的に行いました。仕分け後、廃棄や電子化、倉庫保存等の作業を行い、当初目標として設定した50%を超える既存文書の削減量52.6%を達成。新たに紙を増やさないために無線LAN整備とノートパソコンの導入や遠隔会議システムの整備によりペーパーレスな打ち合わせや会議を推進。移動時間や資料のコピー・印刷などの手間、コストを省き、コミュニケーションが活性化するなどの効果が現れ、場所にとらわれることのないフレキシブルな働き方が可能になりました。

  • 既存文書の削減前

  • 既存文書削減後

事務系基幹システム見直しプロジェクト

TV会議システムを使った町田〜新宿キャンパス間の打合せ

ペーパーレス化の実現に向けて、稟議や経費精算などのワークフローやスケジュール管理を見直し、新たなグループウェアの導入を行い、学内イントラシステムを整備。2019年4月より運用を開始しました。

学内のみ利用可の制限があった既存システムを一新し、電子申請手続き、スケジュール予約・管理及び情報の発信と集約を行うことや、これらの機能について学外からのアクセスがあわせて可能となったことで定型事務処理が簡潔に行える様になり、意思決定や業務の実行が大幅に迅速化しました。

今後は、各部署で紙文書にて申請や届出の管理を行っている各種手続についても電子ワークフロー化することを目標としており、さらなる効率化や業務量の削減を図ります。

<効果>
ペーパーレス化や事務申請・手続の電子化によって、紙を探す時間コスト、印刷・保管・廃棄コストや空間コストの削減、文書紛失や流出を防ぐセキュリティの強化及び業務処理の効率化・迅速化が実現。増加したオフィススペースは、教職員のミーティングや作業スペースとして有効活用され、活発なコミュニケーションを生んでいます。また、留学生など学生が多く出入りする国際センターは、職員のフリーアドレス化を進めることで、学生に応対するスペースを拡大しました。

ワークスタイル改革2.0(2019~2020年度)

ワークスタイル改革1.0では、これまでの仕事のやり方を見直し、個々の生産性を向上するために、ペーパーレス化を推進、事務系の基盤システムを整備、テレビ会議システムを導入することなどでコミュニケーション基盤の見直しを図ってきました。 ワークスタイル改革2.0では、それらの定着と更なる拡大を図るとともに、PDCAサイクルを回すことで改善を進めました。

  • ワークフローシステムの申請メニューの拡大
  • 経費精算システムと会計システムの連動
  • デスクトップPCのノートPC化(教職員1人一台貸与)
  • 学生アルバイト勤怠管理のクラウド化(オンキャンパスジョブの推進)
  • オフィス環境改革(ペーパーレス推進とフリーアドレス化)

また、これまで各担当部署で管理されていてた学生情報(受験〜入学者、海外派遣・受入留学者、就職活動)と基幹学生情報の一元化(文部科学省Plus-DX採択)に着手。その他、人事情報システムや経営情報管理システム(BIツール)の導入、経営情報管理システムによる財務状況の可視化に着手しました。

業務量の把握と改善

全部署を対象とした業務量調査を行い、1〜4の手順で、既存の業務種類、業務量、担当者職位、業務に要する時間等の総合的な把握を行いました。

  1. 規程上の業務分掌に沿ったヒアリングを行い、実存する業務種類を把握
  2. 専任職員、派遣職員、パート職員が、それぞれ業務に費やす時間を把握
  3. 業務に費やす時間の業務区分(ストラテジー、マネジメント、オペレーション)への配分状況を把握
  4. 業務をコア業務とノンコア業務へ分類(専任職員が主として行うストラテジー業務かコア業務以外かを分類)

全て1年間(2019〜2020年度)の業務の量

実施の結果、本学園では、民間上場企業と比べてストラテジー業務が10%少なく、かつオペーレーション業務が10%多いこと、専任職員のノンコア業務が多く、かつ部署によって偏りがあることが分かりました。この結果を受け、システム化できるものはシステム化することで、ストラテジー業務と学生対応に割く時間を増やすことができないかを検討し、主に次のような施策を実施しました。

  • 経費精算システムの導入
  • 学生アルバイト勤怠管理のクラウド化/スマホ打刻
  • Slackの活用(コロナ禍のおける面接等で活用)
  • チャットボットの導入
  • Beacon出席アプリの開発(出席や滞在時間を把握) など

ワークスタイル改革3.0(2021~2022年度)

JQA-QMA16541
法人本部
学園内の事務機能に関わる一連の業務

ワークスタイル改革2.0で着手した各種システムの開発・導入を引き続き行うとともに、ISOの考え方を取り入れた業務改善プロジェクトを発足させました。この業務改善プロジェクトは、法人5部門(人事部、総務部、経理部、情報システム部、施設管理部)を当面の対象として、ワークスタイル改革2.0で行った業務量調査のデータを活かしつつ、ISO9001(品質マネジメントシステム)のフレームワークを活用し、業務運用の現状把握と見直しを行いました。

(改善目標)
  • 業務のムリ・ムダ・ムラの低減と働き方改革推進
  • 意図した成果の達成を目指す仕組みづくりと運用方法の改善
  • 業務運用におけるリスクに対する意識向上と対応方法の改善
  • コンプライアンス浸透、管理の透明化と健全化、内部統制や社会的責任などの取り組みを目指した業務運用体制の見直しと改善
  • 「目指す姿」や「解決したい課題」に取り組める「自律型人財」の育成

プロジェクトでは、業務を「見える化」することで、業務内容やフローを抽出しました。そこで明らかになった業務の無駄やリスクの低減を図るため、業務フロー図や手順(規程)などの見直しを行い、業務運用マニュアルを構築しました。業務運用マニュアルは、学内規程類とともに一元管理できるよう、電子版文書管理を再構築しました。 また、学園のステークホルダーに対する顧客価値を定義し、経営方針と業務運用のビジョンや方針を「見える化」しました。そして学園の目標を下位展開し、各部門個別の課題を明確化した上で、改善目標とその達成計画を設定しました。

ISO9001(品質マネジメントシステム)認証を取得
業務を「見える化」し、標準化されたマニュアルを整備することで、業務の属人化の解消や業務品質の向上、職員の人材育成へとつながる成果が生まれました。 この業務改善プロジェクトの取り組みをさらに発展・標準化させ、学内の業務に定着させるため、ISO9001の認証取得に臨み、2022年7月22日、認証を取得しました。 今後は、改善のPDCAサイクル実践や環境マネジメントシステムの編入(ESG、SDGs等)を進めて行きます。

専門誌「アイソス」に本学の取り組みが紹介されました

One 桜美林 〜魅力ある桜美林にするために〜

様々なステークホルダーにとって魅力ある学園にするためには、事務部門における各部門の連携強化と業務運用の効率化、そして多様な能力を持つ職員の相互協力により、課題の解決を議論し、提案し、事務化し、より良い学園の実現を図ることのできる体制を構築する必要があります。 そこで、2022年8月から以下を目標とする新たな取り組み「One 桜美林」を発足しました。

  • 事務部門全体に関わる課題について、ひとつの部門での検討に留めず、学園内のクロスファンクショナル(部門横断的)なチームで議論し、検討し、 決めていける仕組み(場とプロセス)を創ること。
  • 事務部門相互の連携強化と部門間の壁の排除による業務運用の効率化を目指す上での課題を、上記の仕組みで解決すること。
  • いろいろな能力や専門性を持つ職員相互の協力により、桜美林学園の新たな価値創造をクロスファンクショナル(部門横断的)なチームで目指すこと。

One 桜美林では、身近な問題からテーマとして取り上げ、解決していきます。この活動を通じて生み出される仕組みや成果がISOマネジメントシステムに結び付けられ、更に改善に繋がるものと期待しています。この取組を通して学園全体が持つ力を結集することで、「ひとつの桜美林」の姿を具現化し、本学園のステークホルダーにとって新たな価値を創造する魅力ある桜美林学園を目指します。