同窓生による座談会

桜美林学園 同窓会

桜美林を卒業した同窓生の数は、今や10万人以上。同窓生と学園を結ぶ同窓会は、今後ますます重要な役割を担っていく。今回、世代の異なる同窓生に集まっていただき、今後の同窓会や学園への思いを語っていただいた。
聞き手は同窓会副会長・藤田学さん。

交流の場“リ・ユニオン”

藤田 学さん
(1994年度大学院国際学研究科卒)
同窓会副会長

藤田学(以下藤田)
本日は20~60代の幅広い世代の皆さんに集まっていただきました。まずは簡単な自己紹介をお願いします。

提中だいなか義江さん
(1968年度高校卒)

提中義江(以下提中)
私は中学・高校の6年間を桜美林で過ごしました。今も近くに住んでいるので、桜美林が変わっていく様子を目の当たりにしてきました。

上野喬雄さん
(2005年度高校卒)

上野喬雄(以下上野)
高校を卒業後、専修大学へ進学しました。会社員を経て、現在はテコンドーの指導者と選手をしていて、アジア選手権に向けて体を絞っている最中です。

長尾洸太さん
(2016年度大学健康福祉学群卒)

長尾洸太(以下長尾)
私は今年大学を卒業したばかりです。学生時代は大学祭の運営を担当していたので、他の学生よりは大学に愛着があると思います。

藤田
同窓生という共通点をもって、語り合える場が同窓会の魅力だと思います。リ・ユニオンに参加されたことはありますか。

長尾
学生時代にスタッフとして参加したことがあります。その際、大学祭を運営していた卒業生の方に、昔の大学祭について話していただきました。自分が関わっていることについて先輩の話を聞けるのはとてもありがたい機会です。同じ団体に所属していたという共通点など、縦のつながりを強化すれば、世代間の交流はもっと深まるのではないかと感じました。

上野
リ・ユニオンには参加したことがないのですが、成人式のお祝いはしていただきました。長尾さんの言うように、縦のつながりを強化する意味でも、例えば部活の新旧エース対談とか、部長の対談とか、自分と同世代の人が出ていれば広報誌を読むようになると思いますし、リ・ユニオンに参加する気になるのではないかと思います。

堤中
私の周りには桜美林の卒業生が結構いますが、リ・ユニオンに参加したことのある人はいませんでした。私も行ったことがなく、いつも参加していた夫※に「よく毎年行くね」なんて言っていたのです。ですから、「来年は行こうよ」と呼び掛けるのもきっかけとして必要だと思います。同年代以外とつながるには、クラス会とは別にリ・ユニオンに参加するのが一番だと思います。
今、人生を振り返ると、中学・高校時代が自分の人生に大きな影響を与えたと感じます。大学も同じで、やはり人生の土台になる時期だと思うのです。以前は距離を感じていましたが、最近は、同窓生にも教職員にも学生にも、親近感を覚えるようになりました。

※ 提中さんのご主人は、大学の卒業生であり、中学校英語科の先生だった提中勇さんです。

安三先生と建学の精神

藤田
提中さんは2011年に安三先生の生誕地を訪ねる旅へ、13年に『清水安三物語』観劇ツアーへ参加されましたが、そのときのお話を聞かせていただけますか。

堤中
中学生のときにも修学旅行で訪ねる機会はありましたが、琵琶湖のほとりは本当に良いところですし、生誕地の人たちの安三先生への思いや誇りをヒシヒシと感じました。土地を訪れるだけでなく、実際に話を聞けたことが良かったですね。また、同窓生の皆さんと1日同じバスで行動し、共に過ごす時間ができたのも良かったです。『清水安三物語』は、生で演じられる姿を観て、本を読むのとはまた違う感動がありました。

藤田
実際の安三先生には、どんな印象をお持ちですか。

堤中
とにかく話の長い人でした。入学式や卒業式で何度同じ話を聞いたことでしょう(笑)。でも、それもある意味宝ですよね。『桜美林物語』も当時はきちんと読んでいませんでしたが、大人になって読み返すと、安三先生と郁子先生がつくった桜美林で学べたということ、安三先生の思いや信仰が自分の人生の指針になっていることを感じました。安三先生のことをもっと伝えていかなくてはいけないと思いますね。その点同窓会は、建学の精神を伝えてくださる場だと思います。

藤田
今年のリ・ユニオンで、佐藤東洋士理事長が建学の精神の話をされました。特に苦学生や震災でご両親を亡くされた学生の話をされて。奨学金を作って、手を差し伸べていくような学園でありたいと話されました。実は、私も手を差し伸べてもらった一人で、奨学金で授業料を賄いました。

上野
学校をつくった経緯を聞いたのは、高校入学時でピンと来なかったのですが、今、子どもたちの指導や教育に携わっていると、ちゃんと話を聞いておけば良かったと思います。入学時に渡された『石ころの生涯』もきちんと読んでみようと思いました。僕が今必要としている言葉がそこに載っているような気がします。

藤田
私は町田市の市議会議員をしていまして、市議会の本会議で「誰もが希望する環境を」というテーマがあり、中国の女の子たちが苦境の中にあるとき、技術を付けさせ、読み書き・計算を教えて自立をさせたというのが桜美林学園の始まりだと話したら、皆さん感激されました。今度「学而事人」というのが町田市の教育方針になるかもしれません(笑)。そんな安三先生の思いをわれわれも広報誌やイベントなどで伝えていければと思います。

同窓会をもっと広めるには

藤田
そうは言っても、若い世代の参加者が少ないというのが私たちの悩みでもあります。若い世代にイベントに参加していただき、広報誌を読んでいただくには、どうしたら良いでしょう。

上野
僕らの世代は、自分の生活や仕事のほか、人生を模索している最中で、余裕がなく、なかなか難しいとは思います。ただ、悩んでいる世代の身近な年長者は、上司など話しにくい相手が多いので、同窓会のつながりで、悩みを解決できるような糸口やヒントが見つかるようにできたら効果があるのかなと。僕も会社を辞める少し前に悩んでいて、高校の担任の先生からアドバイスを受けました。そのときの言葉は、むしろ今になって役に立っています。
広報誌については、新旧の対談とか、表紙の見出しなどで目立つと良いと思います。自分に近い世代の記事が載っているとわかれば、ライバル心も湧いて絶対に見ると思います。

長尾
自分が所属していた団体の特集を組んでもらえるとうれしいので、読むきっかけになると思います。文字がいっぱいだと読みづらいと思うので、見出しで○○団体新旧代表の方の座談会とか、昔の○○団体はこんな感じでしたなどと見せて、写真があれば興味が湧くかなと思います。

藤田
リ・ユニオンについてはどう思われますか。

長尾
スタッフをしていたときに感じたのは、毎年来ている方同士はあいさつを交わしていても、初めて来た方はちょっと溶け込みづらいということ。お酒が進むと、楽しい集まりだけで終わってしまうこともあります。ですので、最初は意図的に違う世代の方とお話ししていただくとか。最初が難しいと思うのですが、2回目以降も来てもらうには、身内で固まりすぎずに、全体でできることがあるとおもしろいと思います。

上野
足かせになるのは、やはり初めて参加するハードルです。最初のハードルがなくなれば参加しやすくなると思います。

田邊佳織さん
(1977年度大学文学部英語英米文学科卒)
同窓会広報委員会委員長

田邊佳織
私も最初に参加したときは一人で、先生に会いたいと思って出掛けました。出席予定の先生方を告知しているので、先生と話せるということでスタートしてもおもしろいと思います。幹事としては、なんとか独りぼっちにしないように考えていますが、まだまだ足りないと反省しました。

桜美林の学びで得たこと

藤田
オベリンナーで良かったと思うのはどんなときですか。

堤中
桜美林に来たから私はクリスチャンになり、その後の人生で桜美林と密接に関わったので、親にも感謝しています。桜美林の建学の精神は、キリスト教が土台になっているので、やはり桜美林に来たらキリスト教の精神が何であるかということを受け止めて卒業してほしいし、聖書の言葉が人生の中でいろいろ支えになるということを知ってほしいですね。
安三先生と郁子先生についての資料もあまりないので、見える形で足跡を残してほしいです。展示する場所も作ると良いですね。桜美林で学んだのに、創立者のことをよく知らないで終わるのは悲しいです。桜美林の歴史があるから学ぶことができ、自分たちの今があるのだと知ってほしいです。

上野
私立は先生の異動がないので、会いたいときに戻って来られるというのが一番ですね。あとは、キリスト教に触れたことです。悩んだときに聖書を開くと、開いたページにヒントがあると聞き、よくやっていましたが、自分の人生にヒントを与えてくれたように思います。キリスト教の精神「人に優しくする」ということ、キリストが神ではなくて、ただの人だと教わったことは、僕の中で大きかった。競技ですごく強そうな人と対戦するときに、結局あの人も人なんだ、と思えるのです。世界を相手に戦い、こういう考え方ができるようになったのは、高校での経験があったからだと思います。

長尾
桜美林全体で地域のイベントに参加したり、貢献したりしていると思いますが、自分も学生時代にいろいろと外で活躍できる場を与えてもらったと感じています。今日の座談会も貴重な経験です。桜美林を卒業して良かった、オベリンナーで良かったと思う機会がこれからもっと増えると思います。今後は、そういったことを発信できる立場になれたら良いなと思います。

これからの同窓会について

佐藤誠一郎さん
(1970年度高校卒)
同窓会会長

佐藤誠一郎
いろいろなご意見、本当にありがとうございました。これからは、幼稚園、中・高、大学と同窓会の情報を一つの学園誌としてまとめる予定です。全ての同窓生に向けて、学園全体の様子が見やすくなると思います。
リ・ユニオンは、僕らが1年間活動したことについて、興味のある人に集まってもらえるような場にする努力をすることが必要ですね。上野さんも話していましたが、卒業生が今どんなことをやっているかということをどんどん取り上げれば、縦と横のつながりができてくると思うのです。仲間意識も強くなると期待しています。
忘れてはいけないのは、隣人愛がキリスト教の基本的な考え方で、そのことを通して「学而事人」があること。また、学校を訪れたときに、なつかしいと共有できる場所が必要だと感じました。100周年まであと4年です。皆さんの意見を重大に受け止め、良い同窓会を作っていきたいと思います。