「立派な庭園が出来ましたね」と道で行き合った卒業生の父兄の一人が他ごとならず喜んで挨拶して下さった。
庭といっても唯十種類位の大小の庭樹が配置され、講堂の外側に一叢の木立を作っているに過ぎない。
植えられた木々は女真一、つつじ二、綿木一、唐しゅろ二、白蓮一、桧葉三、金松二、杉二、ドウダン二、黄楊二、白檀五、桧一、青柾木二、椿一、ウバメ樫一、青木二、ヒマラヤ杉二等々である。いずれも埼玉から搬入された。三年越しに積み立てられた卒業生の記念植樹である。玄関の左、講堂と、ハイウエイ(現在の町田街道)の間の空き地は、従来は乱雑な草叢のまま放置されていて、よく「耕地をああしておくのは勿体ない」と、村人の批評のささやきを耳にしたこともあった。それが創立十年目に、漸く道行く人々から庭園と見えるまでの形を備えたのである。ただこれだけの植樹ではあるが講堂の存在が、どれだけ奥床しくなったことか。講演を聞くにも、式典を挙げるにも、ぐっと落ち着いて整別された感を与える。